わたくしは立場上、実装がダメなことにはとやかく言いますがポリシーについてはとやかく言わないことをポリシーとしており、また個人的にも所属組織的にも付き合いがある企業様を痛烈に批判するというのはブーメランとか槍とか鉄砲玉とかソーシャルメディアガイドラインとか飛んできたりしてリスキーではあるのですが、どう見てもアウトだろこれ、と考えるに至りまして筆を取らせていただく次第です。
これ
どう見てもアウトだろ。理由は単純で、そういう目的で設置されたボタンではないし、はてなブックマークボタンが設置されているサイトは、はてなの管理してないサイトなのではてなの裁量でやってはいけないからです。いつから「はてな」は「はてなが管理してない」サイトのログを勝手に使って良いことになったのですか。
はてなの問題
行動情報の取得(個人情報以外)
とか
個人が特定されうる情報(生年月日、メールアドレス、はてなIDなど)は一切収集されません。
とか、いかにも個人情報じゃないから、はてなの裁量で勝手にやっていいみたいなニュアンスが読み取れるのだけど、はてなと言えば管理画面のURLにユーザーidが入ってることで有名なので、管理画面からリファラがあれば、それがはてなid誰々さんだと分かるわけで、当然このように http://gyazo.com/f4729771f4b6ead8ae5717d27166384a /mala/admin に訪問したからにはid:malaさんに違いないという情報がマイクロアドにも送られてしまう。ただし、マイクロアドは、わざわざこの情報を使わないだろう(行動ターゲティングをやる会社にとって個人を特定可能な情報はリスクでしかないから)
そもそも、外部サイトにおいても、URLやリファラに「生年月日、メールアドレス、はてなIDなど」が含まれないことを誰が保証できんの?
- 個人が特定されうる情報は一切収集されません、というが、それは間違いで、収集されることがある。
- 「個人を特定することは出来ません」ではなく「個人を特定することをいたしません」と言うべきだ。
あとこの情報収集しないブラックリスト指定はなんなの?
http://b.st-hatena.com/js/bookmark_button.js
var domains = 'www.toyokeizai.net member.toyokeizai.net excite.co.jp exblog.jp mainichi.jp jp.msn.com *.jp.msn.com itmedia.co.jp bizmakoto.jp atmarkit.co.jp eetimes.jp ednjapan.cancom-j.com ednjapan.com barks.jp www.asahi.com *.asahi.com jp.techcrunch.com japanese.engadget.com jp.autoblog.com celebrity.aol.jp www.nikkei.com *.nikkeibp.co.jp japan.cnet.com japan.zdnet.com builder.japan.zdnet.com japan.gamespot.com www.re-source.jp www.yomiuri.co.jp groupon.jp';
マイクロアドの問題
そもそもなんでマイクロアドは、こんな情報もらって良いと思ってるの?
http://send.microad.jp/w3c/jiaa.html
提供を受ける者の範囲 MicroAd広告アドネットワーク(MicroAdの広告が表示されるパートナーメディアのみとなっております。
いつの間にはてなブックマークボタン設置してるだけでMicroAdの広告が表示されるパートナーメディアになってしまったの?
それともこれは企業向けソリューション( http://www.microad.jp/solution/ ) で、通常のMicroAdの広告とは一切関係なくMicroAdはサーバー貸してるだけで収集された情報について一切関知せずpartnerid=6は、はてなに対する広告配信及びアクセス解析機能を提供してるだけみたいな感じなんでしょうか、それだとMicroAdのトラッキングCookie使ったりMicroAdのページからオプトアウトするのが不自然な気がします。
http://b.hatena.ne.jp/help/bbuttonには
また、この取り組みは「一般社団法人 インターネット広告推進協議会(JIAA)」が定めるガイドラインに遵守しております。
って書いてあるんだけど、提供を受ける者の範囲間違ってるよね。間違っててもガイドライン遵守してることになるの?
そんなことどこもやってるのでは、という誤解
ブログパーツやソーシャルボタンの類で行動履歴が収集されるのは当たり前、と考えてしまっている人がいるようだ。最初からそういう目的であると謳って配布されている広告やブログパーツであるなら分からないでもないが、当初はそういう目的ではなかったのに後から行動履歴が収集されるようになる(しかも他社のサービスのシステム使って)、というのは異例だろう。
単にアクセスログが残るという話と、トラッキングに使われるということは明確に違う。「そのような疑いがかけられる実装をしている」ということが、繰り返し報道されることによって、いつの間にか既成事実化してしまった。メディアはきちんと「アクセスログが残ること」と「トラッキングが行われていること」を区別して報道してください。
ちなみに自分は以前にこう書いた。
http://d.hatena.ne.jp/mala/20111202/1322835191
ちなみに自分は「広告以外の目的」で普及させたlikeボタンや+1ボタンを使って、ボタンをクリックした場合はともかく、表示しただけ収集可能になるWeb訪問履歴を使用してユーザーの趣味趣向の分析や広告配信の最適化のために使うことは、おそらく無いだろうと考えている。理由としては既に広告のターゲッティングのために十分な情報を収集していて、これ以上収集する必要がないであろうこと、表示しただけではノイズが多すぎるだろうこと、さらに加えると、いくら何でも良識のあるエンジニアが止めるだろうと信頼しているからだ。
これを書いた時に、はてなブックマークボタンの事例を全く知らなかったし、はてなには良識のあるエンジニアがいなかった・・・。GoogleもFacebookもトラッキングに使うということを否定している。それをやったら大問題だからだ。
Googleの場合
Facebookの場合
単に「アクセスログが残る」という話だったのに「情報が収集される→トラッキングされる→広告の最適化に使われる」と人々の意識に刷り込まれてしまった。
かつてGoogleがやったこと
Googleが行動履歴を収集しているのはAdsense広告であって、+1ボタンではない。そのAdsenseも以前は行動履歴を収集していなかった。Googleは、Adsenseをコンテンツマッチ広告から行動ターゲティング広告に変更するにあたって「訪問者の許可を取らないといけないからお前のサイトのプライバシーポリシーを変えろ」ということをやった。
これと同等の取り組みをするのであれば、はてなが許可を取らなければいけないのは、ブックマークボタンを設置する人に対してではない、情報を収集される訪問者に対してだ。はてなブックマークボタンを設置するにあたって、あなたのサイトのプライバシーポリシーを変更してユーザーの同意を取ってください、とお願いして回らないといけない。
とはいってもソーシャルボタンの類で当然にユーザー行動履歴が収集されるものなのだと世間一般に認知されるのは業界全体にとってマイナスだと思いますし、同意取って済む話では無いので、今すぐ中止したほうがいい。